糖尿病の人はガンになりやすい?

院長コラム

Q3 糖尿病患者はガンになりやすいですか?

 

 

実際に統計的にみますと、コホート研究や症例対照研究では、肝胆膵・上部下部消化管・乳房・子宮内膜・泌尿器ほぼ全てにおいて、発がんリスク上昇に関連があると結論がついております。
東北大学病院の正宗淳教授もさかえ
3月号で「糖尿病はがん罹患リスクを上昇させることは明らか」と言われております。おそらくは99.9%の内科・外科医師は高血糖状態がガンになりやすいと考えております。
私も基本的にはそう考えており、実際に糖尿病診療においては、悪性疾患の発生には、血管疾患と同様に注意しながら臨床をしております。ただし、「糖尿病患者はガンになりやすい」と言われると、抵抗を感じます。もし患者さんに尋ねられたら、「違います」と答えます。血糖コントロールが悪い糖尿病患者さんだとガンのリスク上昇はあるかもしれません。ただ、それ以上に「がん細胞の発生」には、生活習慣の乱れが(一部の遺伝性悪性疾患を除けば)最も影響しているので、主だった交絡因子を外しても、すべての生活スタイルを統合することは不可能であり、結論から糖尿病だという一点から、ガンが増えるということを語るのは、乱暴だと思います。

ガンこそ生活習慣病の代表です。寝不足、夜間の高脂肪食、低食物繊維、単純糖質、少ない余暇時間、交感神経の優位の時間の持続など、血糖不良群とガンの発生の原因がほぼ重なるわけであり、「糖尿病だからガンになりやすい」というよりも、「生活習慣病として、血糖コントロールの悪い糖尿病とガンが併発する」と考えた方が、精神衛生上も良いのではないでしょうか。