スタチンは長寿薬ではないが・・・。

院長コラム

スタチンは長寿薬ではない。

福田実氏をご存じであろうか?彼は1996年に現在では考えられない理由でメバロチン(コレステロールを下げる薬)とベザフィブラート(中性脂肪を下げる薬)の2剤を内服し、その副作用によって闘病することとなった。この2剤にはそれぞれ、筋肉と神経の活動をおさえてしまう副作用が起こり得るため、現在は併用することはできないが、今も使用している人は多い薬剤である。2008年に医薬品医療機器総合機構に勝訴したのを契機に、今も国や医療機関、製薬会社と戦っている。

以前に比べて処方数は減っている印象があるが、今もなぜこの人が内服しているのか…?という疑問をもつことはある。特にコレステロールを下げる薬は、一時期「長寿薬」などと言われ、男性は40歳を、女性は50歳を過ぎたら、みんな内服すべきなどという医師もいたくらいである。適応が高コレステロール血症ということも問題であり、コレステロールが高い人が全て対象症例となってしまうことも処方拡大につながっている。

スタチンは使用法が正しければ、決して危険な薬ではない。とりわけ狭心症や心筋梗塞などの「冠動脈疾患」になった方の二次予防では圧倒的な力を発揮している。また糖尿病、喫煙、高血圧、冠動脈疾患の家族歴などの「動脈硬化の危険因子」の重積があるケースでも一次予防においても、その効力は絶大である。ようは、使い方である。

福田氏の本を読むと、その時の医師の処方は大いに問題であり、彼は経験した薬害はあまりに悲惨なものであり、もっと世に知られるべきと考えている。しかしながら、臨床試験の解析を誤った脂質栄養学会のようにコレステロールを下げる薬は危険であり、不必要であるなどという極論は注意して対応しなければならない。